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busy_old_fool’s blog

将来は富山に住みたいものです。

翻訳:'Love's Alchemy' by John Donne

愛の錬金術*1

 

ジョン・ダン

 

 

愛の鉱脈を私より深く掘った者たちは

いずこに核となる歓びがあるかを口にする。

           私は愛し、手に入れ、語らった。

だが、老いてしまうまで愛し、手に入れ、語らおうとも

私はその隠れた神秘を見出すことは無いだろう。

            ああ、これは全て詐欺ではないか。

ちょうど未だ錬金術師の誰もエクシリルを手に入れていないのに

            実験のついでに、もし錬金術師が

            芳香性の物質や薬効のあるものを手にすれば

妊娠したように丸い蒸留器*2に栄誉を授ける。

      そのように愛する者たちは豊かで長い歓びを夢想するが

      手にするのはまるで冬のように寒い、短い夏の夜*3なのだ*4

 

私たちの安楽、私たちの繁栄、私たちの名誉、それに私たちの日を

こんな価値のない泡の影に費やそうか?

            愛というのは、私の下僕であれ

新郎役という侮辱を短い間耐え忍べば*5

私が手にできる幸福をみな手に入にできるというだけなのか*6

            「結婚するのは体じゃない、心なんだ。

夫が妻の内面を天使のように美しいと気づくんだ」

            なんて事を誓う、愛で一杯の野郎は

            無作法で耳障りな楽人たちの演奏にも

まさに天球の調べ*7を聞いたと誓うだろう。

      女に心を期待するな。せいぜい頑張って

      愛らしさと機知があるくらいさ。彼女たちはミイラ*8なんだ、それも憑かれた。

 

原文

www.poetryfoundation.org

 

<註>

*1:錬金術は不老長寿の秘薬にして、卑金属を金に変えるというエクシリルを製造する事を目指した学問。ダンが生きたルネサンス期にあってはすでに、似非学問として疑われていた。この詩においてダンは、愛の神秘も錬金術も詐欺だといった口調だが、つまりは愛を極めたかのような口振りでプラトニックな愛ばかりを語る、ペトラルカ以降のマンネリ化した文学的伝統を皮肉っている。

*2:妊娠した(原文でpregnant)という語は、当然人間の生殖を連想させる。

*3:oxymoronといわれる技法。

*4:子供が産まれたら、それはそれで栄誉を得るのでしょうか?

*5:つまり、教会で結婚式を挙げる時の話。

*6:ここの一文では、宮廷風恋愛(courtly love)のような文学的伝統、つまりは上流階級のよりプラトニックな恋愛がより優れた愛だという伝統を踏まえている。

*7:古代ギリシアでは、月や惑星は天球に貼り付けられており、天体の運行とは天球の回転によるものとされた。そして天球が回転する際、天体は数学的比率に従って動くので全体で至上のハーモニーを奏でるとされた。残念なことに、人間の耳には聞こえないそうである。

*8:心がない人形に過ぎない、といいたいのだろう。ただ、ミイラは洋の東西を問わず不老長寿の妙薬とされた。