お昼寝ソフィストの部屋

将来は富山に住みたいものです。

翻訳:'Song: To Celia', aka 'Drink to Me Only with Thine Eyes' by Ben Jonson

シリアに寄せる歌*1

 

ベン・ジョンソン

 

 

あなたの目だけで私に乾杯をしてください*2
  そうしたら私も、目であなたに祝杯を差し上げます。
それか、杯の中にさえ口づけを残してくれれば
  私にはワインなどいりません。
魂からこみ上げてくる渇きは
  神聖な酒を求めるのですから。
ですが、たとえジュピターの神酒*3をすすることが叶うとしても
  あなたの杯と代えたりなどいたしません。
あなたに近頃、バラのリースをお贈りましたのは
  あなたを讃えようとしたからと言うより、
あなたの元でなら、バラにも枯れることが
  無いという希望を持たせられると思ったからです*4
ですがあなたは、バラに吐息を吐き掛けただけで
  私に送り返されました。
誓って申しましょう、それ以来バラが芳しく育つとき
  それはバラではなく、あなたの香りがするのです*5

 

 原文

www.poetryfoundation.org

 

 ジョニー・キャッシュによる演奏(1:00から始まります)*6。暖かく優しい歌声がとても心地よい。

www.youtube.com

 

<註と鑑賞>

*1:この有名な抒情詩の詩行はギリシアソフィストであるフィロストラトス(c. 170/172-247/250)による5つの別々の散文の翻訳のパッチワークである。

*2:恋人に乾杯を捧げるというのは伝統である。目で乾杯をすることの意味までいちいち註をつけるのは野暮というものだろう。

*3:ネクターのこと。ギリシア神話の神々が天上で飲む酒で、飲めば不老不死になると言う。ところで原文のJoveはジュピターのことを意味するが、当時のイングランドでは検閲を避けるためGod、つまりヤハウェ、の代わりに使われることも多かった語である

*4:個人的にはバラの花を愛のメタファーとして読みたい

*5:シリアの吐息を受けただけで、愛のバラは彼にとって永遠に育ちつづけるものとなった。だが、彼女の吐息の理由は何だろう? 吐息を掛けて送り返すのは一体どういうことだろうか? ところで、この詩全体からはとても優しく、暖かい印象を受ける。脚韻はa-b-c-b-a-b-c-b-d-e-f-e-d-e-f-eとなっていて、これも優しい響きを持ち耳に心地よい。この詩では男性が女性に思いを伝えているが、女性はずっと沈黙したままだ。その上、彼を愛してはいないようにも思われる。果たしてシリアは、この至上の恋愛詩を聞いたあと、彼の愛を受け入れるのだろうか?

*6:パブなどで広く演奏されることになったこの音楽は18世紀に作曲された。作曲者不詳。